先日、半沢直樹のドラマから銀行について書きました。
多くの銀行がバンカーとしての責任よりもノルマ・数値ありきの融資を行なっていること、リスクを恐れ企業を育てるという社会的役割を担っていないこと等です。
その中において金融界を席巻している銀行があります。「西武信用金庫」です。西武信金は都銀や地銀では無く信用金庫です。その信用金庫の取り組みが注目の的となっています。
西武信用金庫は、東京都中野区に本店を置く預金規模約1兆4000億円の信用金庫です。その預金規模に対して、この3年間で1000億もの融資増額を達成しているのです。
この数値は驚異的です。同じ期間内での都内の信用金庫の平均は、1金庫あたり200億円程も貸出金が減っています。経済が停滞し、設備投資が減り、新規の資金需要は減っている中、突出して伸びているのです。
西武信金の取り組み姿勢は簡潔です。「融資を取ってくる」のではなく「融資のことはひとまず置いて、お客様が抱えている経営課題や問題点をお伺いして、その解決策を提案するようにする」ことです。
まずは、お客様が抱えている経営課題や問題についての情報をできる限り集めます。そして、解決のための支援を行うのです。
「新しい販路を開拓したい」という課題に対しては、ビジネスマッチングのために販売見込み先企業を積極的に紹介し、「持っている技術を他に生かしたい」という要望に対しては経営コンサルタントやブランディングの専門家を紹介する、販売方法に関しては行員自身も販売戦略会議に参加し案を詰める等々、企業支援の努力に惜しまず取組んでいます。
実際、すべての課題や要望に応えていくことは限界があるため、外部の専門家の方々とネットワークを組んで、問題解決に当たる必要が出てくる、その為外部に1000人の専門家を擁するネットワークを構築しています。
極めつけは、金融機関の側に「リスクを共有する覚悟」があることです。
「失敗しても大丈夫ですよ」という言葉をお客様に掛けるそうです。「私たちが事業創造のお手伝いします。そうである以上、私たちも逃げません。だから、安心してください」と言うそうです。
「晴れの日に傘を差し出し、雨の日に取り上げる」銀行としては、信じられない言葉です。
こう言われればお客様も「じゃあ、挑戦してみよう」という気持ちが湧きます。こうして資金需要を生み、貸出金も増えているのです。
「失敗しても逃げられない」という状況が、行員の姿勢をも変えます。お客様の事業創造の過程に一層真剣に関わるようになり、少しでもまずい状況となれば、早目早目に方向転換・軌道修正を提案するようになります。
その結果、不良債権は減少し、不良債権比率も現在2.8%とこれも驚異的に低い数値となっています。都内の平均は6.1%ですから、貸出金を大きく増やし、不良債権の発生は極めて少ないといえます。
この事実には多くの学ぶべき事項があります。最も大切なことは、働く側がどこを向いているかです。
我々もお客様の笑顔の為に、日々努力しましょう。