既にご存知の方も多いと思いますが、世界でも3本の指に入る権威あるバン・クライバーン国際ピアノコンクールで、盲目の日本人ピアニスト辻井伸行さんが優勝しました。
生まれながらに全盲ですから、辻井さんはこの世界の様子を一度も見ることができず、頼りになるのは、その他の五感だけになるわけです。
とりわけ聴覚、聴覚でも小さい音が聞こえるといった聴覚ではなく、聞いたことをイメージする力や聞いた音を自分のものにする力は幼少の頃から長けていたのでしょう。
母からの声で風景の様子を聞く、それを自分の中でイメージをする、そしてそれを曲として表現するという作業が辻井さんの日常ですが、一般の人は自分の目で見たことが全てですから、そこには曖昧な感覚は無いわけです。
想像やイメージを表現することと、見たことを表現するのでは、脳の活性が全く違うのではないでしょうか。
視点は外れるかもしれませんが、私も将来の予想や、やりたいことをイメージして、戦略を立てたりしますが、脳が一番活性化する時はそういうことに取り組んでいる時だと思います。
自己の中にある情報から、目に見えない世界や起こりうる状況をイメージする作業が、新しいものを作り上げていくのだと思います。
人間は脳の持っている力の数%しか活用できていない、と言われていますが、辻井さんは「天才」という言葉だけではなく、本来だれもが持っている脳の能力を我々よりはるかに高いレベルで引き出し活用しているのだと想像します。
脳を働かせることは、人間の可能性を大きく広げることにつながります。
与えられた情報や状況を鵜呑みにし、毎日を漫然と過ごすのではなく、考えたり、想像したり、イメージしたり、表現したり、文章にしたり、そういった行動、努力が如何に大切なのかを改めて教えられました。
これから辻井さんのCDを購入し、聞いてみようと思っています。